2017年7月6日木曜日

GPCRを標的とした戦略的共同研究

みなさん、こんにちは。IR広報部長の岩田です。昨日、お問い合わせをいただきましたので、今回は6月29日にそーせいグループの子会社である英国Heptares Therapeutics社(以下 ヘプタレス)との間で締結した、戦略的共同研究契約の話をします。


今回の提携は、自社の医薬品候補化合物(パイプライン)の拡充を図ることが目的です。


当社の強みは、独自の創薬開発プラットフォームシステム:PDPSを持ち、創薬の標的となる標的タンパク質さえ用意されれば、それに結合する特殊環状ペプチドをほぼ確実に見つけることができることです。見出された特殊環状ペプチドが各種創薬開発するためのおおもとの物質となるのです。


今回の契約先のヘプタレスは、標的タンパク質として有望と注目度の高いGPCR(細胞膜上の7回膜貫通型受容体)に関して世界屈指の技術を持っています。


人間の体は、それぞれの細胞が互いにネットワークをつくり、それぞれが決められた役割・機能を発揮することで生命活動が維持されています。この際に、外部からの信号を認識し、選択して、細胞内に情報を伝える重要な役割を担っているのが細胞膜受容体です。正しい周波数のみ受信するテレビのアンテナみたいなイメージです。細胞膜受容体の中でも細胞膜を外側から内側へ7回貫通する構造をもつ受容体(GPCRと呼ばれます)は特に医薬品の有望な標的タンパク質として知られています。


しかしGPCRは細胞膜から分離すると立体構造が崩れてしまうので、構造解析が進まず、新薬開発が難しいとされてきました。私の家の玄関にアサガオが咲いていますが、支柱に巻き付いたツルをはずすと元の巻き付いた構造を維持できないのと同じです。この問題をヘプタレスは独自技術で立体構造を安定化(固定化)することに成功しています。


当社は世界中の特別な技術を有する創薬企業・バイオベンチャー企業と戦略的提携を組むことで、自社の医薬品候補化合物の拡充を図っています。すでに16年2月に独自の血液脳関門(BBB)通過技術を持つ「JCRファーマ」と共同研究契約を締結し、17年6月には最先端の計算技術を駆使して迅速かつ効率的に低分子医薬品候補化合物をデザインする技術を持つ「モジュラス」と戦略的創薬研究契約を締結しています。
今回の契約は、その戦略の1つという位置づけであり、炎症性疾患の治療において重要な役割を持つGPCRを標的とする新規治療薬の研究開発・商業化を目指して戦略的共同研究を開始します。